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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(あ)2032号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人林幹二の上告趣意中、違憲をいう点は実質は単なる法令違反の主張を出でないものであり、また判例違反をいう点は引用の判例が事案を異にし適切な判例ではないから所論はその前提を欠くものであって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、原判決がいわゆる輸入に関して示した見解並びに本件鉄板及び謄写機がいまだ本邦に輸入されていなかった物品なるに拘らず、被告人らがその勤務する大和産業株式会社において在日米軍から払下げをうけていた「ヘビーアンプリペアート」スクラップ及びアルミニューム屑の各代替品として税関長の許可を受けることなく、それぞれ相模市所在の駐留米軍工機補給所相模サルベージヤードから搬出して関税を免かれた所為は、関税法一一〇条一項一号に該当するものとした判断は当裁判所もこれを正当として是認する。

弁護人箕山保男の上告趣意第一点第二点は判例違反をいうが、所論各判例は本件と事案を異にする場合の判例であるから、所論はすべて、その前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第三点は違憲をいうが、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない、なお、原判決がいわゆる輸入に関して示した見解の正当であることは前段に判示したとおりである。

同第四点は事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお本件鉄板及び謄写機をスクラップでないとした原判決の事実認定は正当であって、当審もこれを是認する。

弁護人三輪一雄の上告趣意第一は憲法三〇条八四条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお所論のように原判示各貨物がすでに本邦に輸入されていたものでないことは前段の説示により明らかであろう。

同第二は憲法三一条違反をいうが、実質は前段は単なる訴訟法違反、後段は事実誤認の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、原判決認定の本件公訴にかかる被告人らの所為は結局関税法一一〇条一項一号の構成要件を充足し、同条項による処罰の対象と成るものであるから、原審の措置には何ら違法の点を認められない。

よって、刑訴四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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